遺言を使いやすく~40年ぶりの相続法改正(2)
投稿日:2018.11.05
こんにちは。名古屋市東区代官町の弁護士宇田幸生です。
今回は、前回に引き続き、今年改正された相続に関する法律のご紹介です。
今年7月6日、参議院で相続法に関する新しい法律が可決成立し、7月13日に公布されました。
新しい法律は「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という名前です。
主な新制度として以下のようなものがあります。
【配偶者の権利強化】
・配偶者居住権の創設
・配偶者短期居住権の創設
・配偶者特別受益の例外規定の創設
【遺言書関係】
・自筆証書遺言の要件緩和
・法務局による自筆証書遺言保管制度の創設
【その他】
・遺産分割前の預貯金払戻し制度の創設
・相続人以外の寄与による金銭請求権の創設
今回は、この中で、自筆で作成した遺言をもっと使いやすくするための「遺言書関係」の法改正についてご紹介します。
・自筆証書遺言の要件緩和(民法968条)
遺言書でよく使われるものとして、公証役場で作成してもらう公正証書遺言の他、私的に作成する自筆証書遺言があります。
このうち、今回改正の対象となったのは「自筆証書遺言」です。
これまで自筆証書遺言については、遺言者が全てを自筆で作成しなければならないとされていました。
しかし、例えば遺産が沢山あるような場合、各相続人にどのように分配するかすべて自筆で書かなければならないとすると大変です。
そこで、新しい制度では、このような財産の目録についてはパソコン等で作成したものを添付できるようになりました。
・法務局による自筆証書遺言保管制度(遺言書の保管等に関する法律)
自筆で遺言書を作成した場合、公証役場で保管等がされる訳ではないため、遺言書自体がなくなってしまったり、遺言書が改ざんされる虞もありました。
そこで、自筆証書遺言を法務局で保管する制度を設けることで、遺言書がなくなったり改ざんされたりすることをできるかぎり防止できるようにしたのです。
また、法務局で自筆証書遺言が保管されていれば、遺言を残した方が亡くなられた後に、その遺言を発見した場合に行なわなければならない「検認」という手続もしなくてもよいことになりました。
なお「検認」とは、相続人に遺言の存在・内容を知らせ、あわせて遺言書の形状や内容を明らかにして遺言の偽造等を防止するための手続のことです。遺言の有効無効が検認手続によって判断される訳ではありません。
私自身、これまでもご依頼で遺言書の作成を行なってきましたが、自筆証書遺言については、紛失や改ざんの危険等もあり、私自身はあまりご依頼主にはオススメはしてきませんでした。
また、実際に遺言書の効力が相続人間で問題になり紛争となった際にも、自筆証書遺言の方が要件を満たしていない関係でその効力を否定される事案を多く体験してきました。
今回の制度は、このような自筆証書遺言のリスクを少しでも減らし、より使いやすくするための工夫の一つと言うことができるでしょう。
・実施日
遺言の要件緩和については、平成31年1月13日から施行される予定です。また、自筆証書遺言の保管制度については、公布日から2年を超えない範囲内に実施することとされています。